蝶は花を求めて

141/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
翌日、ユーリは鈍痛のする頭を押さえながら体を起こした。 すずはずっとくっついていたらしく、体を起こしたことによって小さく転がった。 今日は湿気がないが、肌寒い。 立ち上がって外を見ると、薄暗い空が広がっていた。 「……今日も変な天気だな」 小さく呟いて、ふと顔の右側に違和感があることに気付く。 包帯が緩んでいた。 (ちっ、だから雨は嫌いなんだよ……) 湿気を吸って緩くなってしまった包帯に触れながらユーリは考える。 時計はまだ朝の七時を指している。 また早起き記録を更新してしまった。 すずはきっとまだ寝るだろうし、ゆっくり風呂に入ってから部屋で直すか、と考えて彼女に上掛けを掛けてから浴室に向かった。 服を脱いで包帯とネックレスを外して、風呂場に降りて湯を浴びる。 肌寒い分、温かいお湯が心地好い。 だが、頭痛は治まらない。 風邪ひいたかな、と思いながら、さっと体を洗って風呂場を後にした。 鏡を極力見ないようにして身支度を整え、髪を乾かし、部屋に戻る。 戻って、後悔した。 すずが起きている。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加