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彼女の提案にユーリはえ、と顔を歪めたが案外良い考えかもしれない。
頷いて立ち上がり、窓辺に行く。
雨が窓にぶつかって透明な幕を作り、重力に従ってゆっくりと流れて行く。
すずはその光景に目を輝かせて、畳に膝をつき、窓辺に手を置いてそれを眺めた。
「きれ~い。雨って綺麗だねぇ。お空からお水が落ちて来るって不思議じゃない?」
「空にある氷が溶けて、落ちてくんだよ」
「氷? どこに氷があるの? お空には雲しかないよ?」
ユーリはその言葉に笑って、彼女の頭を撫でた。
「ウソウソ。雨が降るのは、空の神様が泣いてるからだよ」
「そうなんだ。誰かに虐められちゃったのかなぁ。それともケガしちゃったとか? 可愛そう……。すずが元気にしてあげられないかなぁ……」
理屈より作り話を完全に信じて、すずは空を見上げた。
子供は純粋だ。とてつもなく。
いつから自分はこんなに素直じゃなくなってしまったのだろう。
「……ねぇ、ユーリ。どうしたら神様、元気になるの?」
「さあ、知らね」
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