蝶は花を求めて

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ユーリは倒したばかりの体を起こして苦笑いしながら続ける。 「兄貴はな、ライラックの入社試験に余裕で合格した秀才なんだよ。オレは……無理だった」 「ユーリ、スッゴく頭良いのに? 手ぇ抜いたんじゃないの?」 「そう言ってもらえるのは嬉しいな。……でも、訳ありでさ。ダメなもんはダメなんだよ」 ユーリはそう言って、ふっと遠いところを見つめたかと思うとまたすぐに笑顔をすずに向けた。 「ふぅん。でもすず、頭の良さなんて関係ないと思うけどなぁ。大事なのは心だと思うし」 エヘン、と胸を張るようにすずが言うと、ユーリは頬を緩めて彼女の頭を撫でた。 撫でられたすずはまた小犬のように彼の手に甘えて笑う。 「ユーリは、そう思わないの?」 「オレだって自由に生きたかったよ。頭の良し悪しとか、跡継ぎとか気にしないで……でも大人の世界は複雑なんだよ」 「なんかそんな話聞いちゃうと大人になるのやだなぁ。なんで大人ってつまんないことばっかりするんだろ」 ユーリの手に自分の手を重ねながら言ったすずに、彼は苦笑いしながら彼女の頭をコツンと叩く。
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