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すずはあっと言って頷き、駆け足で浴室に向かって行った。
その間ユーリは一階に降りて、宿の人間に声を掛けた。
「なぁ、あの部屋あと三日くらい借りられるか?」
「ああ、おはようございます。……えーっと、はい。まだギリギリ大丈夫ですね」
「ギリギリ? どういうことだ?」
宿の人間の返答にユーリが不思議そうに言うと、今度は彼がとても不思議そうな顔をしてユーリを見上げた。
「お兄さん、なにも知らずにここに来たんですか? 今日はお祭りがあるんでねぇ、商売繁盛ですわ。有名な、大きなお祭りなんですけど……」
「祭? ……知らなかったな。ってことは、もう満室なのか?」
ええ、と頷いたのを見て、ユーリは頭を掻いた。
祭があるだなんて全く知らなかった。
「ってか、今日雨だぜ?」
「まあ繁華街は屋内に等しいですから。お昼を過ぎたら賑やかになると思いますよ? とても楽しいお祭りですから、お出かけなさるのも良いかと思いますよ?」
彼は饒舌に言いながら帳簿にサインをし、それをユーリに見せた。
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