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ユーリは緩く首を傾げてから再びキセルをくわえてぼんやりと外を見つめていた。
と、キャミソール姿のすずが部屋に現れて早速小言を言う。
「もう、またタバコ吸ってる。イヤだって言ってるでしょ?」
「うっせぇなぁ。匿ってやってんだからタバコくらい許せよ、マジで」
「ぷぅ」
さすがに言い返せないすずは頬を膨らませて、髪が濡れたままの状態でユーリの傍に来た。
タバコ嫌なんじゃねぇのかよ、と思いながらもユーリはキセルの火を消さず、すずに向けた視線を外に戻す。
「あ。なんかオレンジの真ん丸いのが飾ってある! あとみんな、着物着てる。なんで? なにかあるの?」
即座に昨日と違う点を見つけたすずはいつもよりも目を大きくして、ユーリに言う。
ユーリはキセルを口から離すとどこかつまらなさそうに答えた。
「祭があるんだと」
「まつり? ふぅん……」
祭が一体なにであるか分からないまますずは頷いた。
よく見ると、透明の屋根の奥にオレンジの真ん丸、つまりは提灯以外にもいろんな飾り付けがされている。
昨日にはなかったが、いつの間にしたのだろうか。
さっきは空にしか意識が向いていなかったから、気づかなかったのだろうか。
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