8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
未だに雨は降り続いている。
透明な屋根があるとは言え、間違いなく今の時点では小雨とは言えない。
こんな悪天候の中で祭をして、一体なにになると言うのか。
「ねぇ、ユーリ。祭ってなにするの?」
「……なんだろな。辞書に載ってんのは、毎年同じ日にご先祖さんとか仏とか神様にお祈りする行事、ってあるが……ちょっと違う気すんな」
「じゃあなにするの?」
ユーリは肩を一度竦めて見せてからキセルの火を消して言う。
「大勢の人間が一箇所に集まって、出店のもん買ったり、普段着ない着物着て楽しんだりする行事じゃね? オレ、興味ねぇからな」
「へぇ。……人、ほんとにいっぱいいるね。なんかいつもと違うもの売るの? その、でみせ? って」
「ん~? ……林檎飴とか、金魚とか?」
すずはユーリが挙げた二つともに興味を示し、瞳をキラキラさせた。
「なに? リンゴあめって。美味しそう! キンギョってなに?」
ユーリはやべ、と顔を歪ませて立ち上がり、キセルを片した。
そして答えずに布団に寝転ぶ。
最初のコメントを投稿しよう!