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「ねぇ! 無視しないでよ。すず、リンゴあめ食べたい」
「…………」
「ね~えってばぁ!」
ユサユサと体を揺らされ、ユーリは渋々分かったよ、と言って右腕を枕にして目を閉じた。
「祭は夕方からだからな。出店が出始めた昼過ぎに少し出ようぜ? それで良いだろ?」
「夕方からなのに、お昼に行くの?」
「夕方はめちゃくちゃ混むぜ? お前ちっこいからぜってぇ迷子になる」
ちっちゃくないし、と言おうとしたすずだったが、迷子になってしまっては危険だ。
ユーリへの迷惑を考えて、素直に彼女は頷いた。
「悪ぃけどちょっと寝るわ。お前は静かに一人で過ごしてろ」
「ん~、分かった」
「十二時のチャイム鳴ったら起こしてくれよ」
言われたすずは一瞬間考え込み、そして眉間にシワを寄せて言う。
「チャイム鳴ったら起きられるでしょ?」
「寝てたら聞こえねぇだろ?」
「もう……」
ユーリは左手をひらひらさせると、すぐに寝てしまった。
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