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成長の速度はユーリよりも遥かに遅く、ユーリの一枚分がこの男の子の十枚分ほどと言って良い程だ。
すずは無言のまま写真をめくって行き、ふとあるところで手を止めた。
男の子と、赤ちゃんが写っている写真。
赤ちゃんは、ユーリだ。
お兄ちゃんになった男の子は嬉しそうな表情を浮かべて、生まれたてで眠っているユーリの小さい手に自分の手を重ねている。
(……ユーリのお兄ちゃん?)
そういえば、ユーリは以前真ん中っ子、兄がいたとも言っていた。
もしかしたら、彼がユーリの兄なのだろうか。
それから、中等学校の入学式・卒業式の写真や、生まれたひめゆりとの写真が続く。
ユーリの兄らしき男の子は比較的派手顔のユーリとはあまり似ておらず、地味で真面目そうな顔をしている。
眼鏡を掛けているから尚更だ。
だが、ユーリとは対照的に世渡りが上手そうな印象も受ける。
ユーリの写真の五倍以上はある大量の写真を見終わったすずは、最後の一枚を見つめた後一息ついた。
一番最後の写真は、彼がライラックの入社試験の合格証を持って誇らしげな表情を浮かべているものだった。
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