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なぜ彼は常に寂しそうな無表情だったのか。
そして何故、自分が彼の兄のことを知っている気がしてならないのか。
「…………」
すずは一度ぎゅうっと強く目をつむってから、眠りの世界に逃げた。
なにか嫌な感じがして、頭が少し痛くて、いつの間にか深い眠りの中に落ちて行った。
どれ程寝ていたのか、突然頭に衝撃を受けてすずは目を覚ました。
「? なに?」
「お前なぁ。祭に行きたいんじゃなかったのかよ。起こすの頼まれた奴がなんで爆睡してんだよ」
「へっ?」
すずを起こしたのはもちろんユーリだった。
彼は明らかにいらついた顔をしていて、無愛想な表情で自分を見下ろしている。
すずは訳が分からないまま時計に目をやり、ア然とした。
十二時十分。
「あ、っと……うそ」
「嘘じゃねぇよ。偉そうな口利いといて」
「あぅ……」
すずは顔を真っ赤にして、俯くようにしながら彼に謝った。
ユーリは一度ため息をついてから言う。
「……祭。行きたそうだったから起こしたんだが。迷惑だったか?」
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