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すずはそれを聞いてちらっとワンピースの入っている袋に目をやる。
同時にあの青い箱、ユーリの兄であろう人物が脳裏をかすめ、また変な気分になる。
すずは小さく首を振って、袋の中からワンピースを取り出して着はじめた。
ユーリはまだ準備に時間が掛かりそうな彼女に背を向け、キセルに火を点けた。
ワンピースの生地が擦れる音が耳に届く。
しばらくしないうちに、ユーリは裾を引っ張られる感覚に後ろを向いた。
小さいお姫様がそこにいた。
「か、髪……結んでくれる?」
「……了解」
まただ。
胸やけと眩暈と、頭痛。
ユーリはキセルの火を消して、深呼吸してから彼女の髪に櫛を通した。
柔らかい石鹸の香が心地好い。
いつものように頭の真ん中で二つに分け、耳の下で結んでやる。
「はい、完成。んじゃ、行こうぜ」
「うん! ありがとう」
ユーリは極力すずが視界に入らないようにしながら右手を差し出し、すずは満面の笑顔でそんな彼の手に自分の手を重ねた。
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