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「あ、お出かけですか?」
「ああ。せっかくの祭だからな。ちょっと行ってくるわ」
「あい、お気をつけて」
宿の人間にそう言って、ユーリとすずは外に出た。
雨は屋根のおかげで自分達に当たることがない。
人の数は普段の三倍ほどだろうか。
人の頭の波がうねっている。
「めんどくせぇ……。すず、ちゃんとオレにくっついてろよ。はぐれたら死ぬと思え」
「ん、うん!」
言われてすずは、ユーリの手をギュッと握った。
ユーリもそんな彼女の手を握り返す。
そして人だらけの道に降りた。
みんな浴衣を着て、楽しそうに歩いている。
親子にカップルに、友達同士。
一人でいる者もいる。
警備員のような人間も所詮はお飾りで、ただ突っ立ってるだけだ。
「で? お前は林檎飴食いたいんだっけ?」
「うん。あときんぎょ!」
「はいはい」
ユーリは頷き、リンゴ飴と金魚の売っている屋台を探す。
それらは結局、ユーリの背が平均より高いこともあってすぐに見つかったが、突然腕を引っ張られて振り向く。
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