8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「うわ、ちょ……ユーリ、助けて……!」
すずは人の波にさらわれて流されていた。
手を放さないのは偉い。
ユーリは呆れながら力一杯彼女を引き寄せ、道の端に寄った。
「ったく。危ねぇだろ」
「ごめん……」
怒られたすずはしょぼんとして俯く。
ユーリはそんな彼女を見て少し考え込み、そして不意に彼女の前に腰を降ろした。
「? なに?」
「おぶってやるよ。手ぇ繋ぐだけじゃぜってぇはぐれる」
「お、おぶ……おんぶってこと?」
すずはカァ、っと顔を赤くして、少し躊躇うようなそぶりを見せてからユーリの背中に乗っかった。
あったかい。
「お、重くない?」
「重いわけねぇだろ。三十キロくらい」
「さ、三十もないし! 前測ってもらった時、二十四キロだったし!」
ユーリははいはい、と言いながら立ち上がり、道に戻った。
賑やかな祭の光景。
それがすずの目に飛び込んで来て、自然と笑顔になる。
「すご~! 人いっぱいいる! お店もいっぱい!」
最初のコメントを投稿しよう!