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すずはキャッキャとはしゃいで、危うくユーリから落ちそうになる。
慌てて彼の背中にしがみついて、一息つく。
「……ねぇ、ユーリ。片腕しか使えないのに大変じゃない?」
「バカ言え。この体型でお前の体重支えられないなんてダサ過ぎだろ」
「ほんと? 大丈夫?」
心配そうなすずの言葉にユーリは笑顔で頷いて、平気、と優しく言った。
安心したすずは、今度は落ちないように彼にくっついたまま辺りを見渡す。
普段と違う世界。
初めて見る景色はすずの高鳴る鼓動に静まる暇を与えない。
「ほら、林檎飴。食うんだろ?」
「え? あ、ほんとだ!」
前方からユーリの声が飛んできて、顔を正面に向けたすずは瞳をキラキラさせてリンゴ飴の屋台を見つめた。
屋台の前はゴチャゴチャ状態で、客の列は形を成していない。
手当たり次第に金と飴が行き来している。
「お! なんだい、お嬢ちゃん。良いねぇ。お兄ちゃんにおんぶしてもらってんのかい?」
「へ?」
「お嬢ちゃんだよ、可愛いピンクのワンピース着てる、そう君だよ」
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