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ユーリは頷いて、彼女と一緒に金魚を見つめる。
「……なにが良いのか分からねぇ時代だからな。昔は本物の金魚売ってたんだぜ? でも破棄される金魚が多過ぎて、ライラックが手ぇ打ったんだよ」
「はき? 捨てられちゃうの?」
「ああ。元々あんな屋台に連れられてる時点でだいぶ弱ってっからな。それに飼育がめんどくせぇし。ライラックが綺麗な金魚選んで、大量にそのクローン作ってロボットみたいにしちまったんだよ」
ふぅん、とすずは頷いて、ユーリの顔に向けていた視線を再び金魚に向ける。
金魚はすいすいと小さい袋の中を泳ぎ回り、止まることがない。
長いことそれを見つめていたすずは、何故か少し切なくなって金魚から視線を外した。
「ねぇ、ユーリ。さっきおじさんが言ってた、はなびってなに?」
「ん? 火薬打ち上げて、空で爆発させるやつ。結構綺麗だぜ? 雨が止んだら……ってか、最近のはライラックが作ってっから、見られると思うけどな」
「ふぅん。すず、はなび見たいなぁ。このお部屋から見えるんでしょ?」
らしいな、と言って、ユーリはちらりと机に置かれているリンゴ飴に目をやる。
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