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「あい、承知の上ですわ。別に宿の為に働いて貰うなんてことも頼みませんし。とりあえず報告だけ」
「ん、分かった。じゃ、楽しんで来て下さい」
ユーリが素っ気なく言うと、主人達は嬉しそうにお礼を言って、頭を下げた。
それを見てドアを閉めようとしたユーリだったが、突然ガッとドアを掴まれて一瞬驚く。
「……今度はなんだよ」
「ああ、いや。聞いてるかと思いやすが、兄さんの部屋からは花火がよく見えるんですわ。よかったら楽しんでくだせぇ」
「ん、はいはい。でもまだ雨降ってっから」
呆れたようにユーリが言うと、主人は頭を掻きながら言葉を探し、答える。
「……まあ、最近の花火は雨でも打ち上げられるみてぇですし」
「いや、空気が湿ってっとあんま綺麗じゃねぇから……」
ユーリはつまらなさそうにそう言うと、今度こそドアを閉めた。
ふぅ、と一息ついて、再びリンゴ飴を舐め出したすずをちらりと見る。
ピンクのワンピースを着て、ちょこんと座り込んで、大人しくリンゴ飴を食べる少女。
「……----っ!!」
途端、ズキリと痛みが頭に走って、思わず膝から崩れ落ちそうになる。
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