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それを堪えて、首を数回振る。
「ユーリ? どうかしたの?」
「……いや、なんでも。……なんでもねぇ」
すずの心配そうな声に弱々しく答えて、ユーリはどこかイラついたようにしながらまた窓辺に腰を降ろした。
時計はまだ一時半を指している。
花火大会まで時間は余るほどある。
「すず。オレ、もう一服したらまた寝るわ。また好きなことして時間潰してろ」
外に視線をやりながらのその言葉にすずは頷いたが、それすら彼は見ていない。
「……またタバコに火、つけるの? さっきも吸ってたのに」
ようやく飴の下のリンゴが出て来たのを見ながらすずが言うと、ユーリは左手をひらひらさせるだけで何も言わず、キセルに火をつけた。
それを口にくわえて吸えば、先程の頭痛はあっという間にどこかに行ってしまう。
「ふぅ……」
ユーリは心拍数がおかしかった心臓が落ち着いたのを確認すると、火を消して布団に寝転がる。
ひんやりと冷たい感覚が、火照った体に心地好い。
「ねぇ。もしはなび始まっても起きなかったら、起こして良い?」
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