蝶は花を求めて

177/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「ああ、いいぜ。まあ、さすがに起きると思うけどな」 その言葉の意味がよく分からなかったすずは一旦首を傾げたが、すぐにまた飴を舐める。 ユーリは右腕を枕にしながら、左手で胸元のネックレスを無意識のうちに弄っていた。 銀色の綺麗なネックレス。 次第に視界がぼんやりと滲んで来て、そしてそのまま、ユーリは眠りの中に落ちて行った。 爆発音を聞いて目を覚ました時には、外はもう暗く、爆発音が響くたびに明るい光が自分を照らす。 「ユーリ、ユーリ! ほら、花火! 始まったみたいだよ!」 ああ、花火の音か、と理解したと同時に、激しく体を揺すられて完全に覚醒する。 「んな揺らすなよ。起きてるよ」 「だって綺麗だよ! ほら、早く!」 妙にテンションの高いすずは嬉しそうに言って、すぐに窓辺に走って行く。 ユーリはまだ眠たい目を必死になって開き、頭を掻いて部屋の電気を消してから窓辺に向かった。 真っ暗になった部屋から見えるのは、暗い空。 視界の下には控え目な光を放つ提灯がちらちらと入り込んでくる。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加