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と、か細い打ち上げ音が聞こえたかと思うと、派手な爆発音が聞こえて、途端眩しく美しい光の粒子が目に飛び込んで来た。
「うわぁ、きれ~い……」
すずは瞳をキラキラさせて、空に浮かぶ火の球体を見つめる。
その後も花火は休む隙もなく打ち上げられては爆発し、見ている者の目を楽しませる。
柳のように黄金の火が垂れ下がる花火、大小様々な球体がポンポンと弾ける花火。
どれを取っても美しい。
更に言えば、屋根に溜まった雨水に光が反射してキラキラと輝いているのが、更に見る者を楽しませる。
すずはいつの間にか歓声を上げるのも忘れ、花火に見惚れている。
ユーリは、花火に向けていた目を何となく彼女に向けて、唖然とした。
花火の派手な音も、眩しい光も、彼の意識に入り込むことができないほどに、放心状態となった彼の目には、黒い髪を二つに結った少女のみが映る。
ピンクのワンピースを着て、花火の光に幼い顔を照らされた少女。
身を乗り出すようにしながら花火を見つめる彼女に、一瞬誰かの姿が重なる。
その瞬間、再びユーリの頭に激痛が走り、彼は思わず頭を抑えながら部屋を出た。
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