8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「おい、なんでついてくんだよ」
裾を捕まれた青年は小さい鈴蘭を見下ろしながら言った。
少女は長身の彼を見上げて言い返す。
「だって助けてくれたし。べ、別に良いでしょ。行く場所、ないし……」
「オレも行く場所ねぇけどよ。なんかオレ、危ない趣味の誘拐犯みたいじゃねぇ?」
「気にしなくて良いよ。子供です、って言えば」
彼女の言葉に青年は顔を歪める。
いきなり饒舌になりやがって。
「……あのさぁ。お前、オレがいくつに見えてる? てか、こんな格好してる親いるか?」
「さぁ。でも、世の中いろんな人がいるから」
「……まず。オレはこう見えてもまだ二十四だ。お前みたいなデカイガキ、いるわけねぇの」
深くため息をついてから、青年は言った。
鈴蘭は彼の裾を掴んでいない方の手を顎に当てて、なにやら考え込む。
そして口を尖らせながら言った。
「……まだ八歳なんだけど」
「その計算だと、オレが十六で父親になってんだろ? 言っとくが、オレは一生結婚もガキ作る気もねぇんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!