8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「ん……分かった。ほんとに大丈夫?」
心配そうなすずの声に、ユーリは見える訳もないのにその場で頷き、深いため息をついた。
目をつむり、なにも考えないようにする。
だが、しきりに聞こえる花火の音がそれを邪魔する。
低い爆発音はユーリの胸を震わせて、落ち着かせる暇を与えない。
「…………」
それすらも無視することが出来れば、あっという間に頭痛も胸やけも眩暈も無くなり、冷や汗も引っ込む。
ユーリは床や壁を支えにしながら立ち上がると、今までで一番深い深呼吸をしてドアを開けた。
すずを見ないように。
視線は常に下に向けて。
「あ。ユーリ、大丈夫?」
「……あぁ。なぁ、すず。花火をお楽しみ中に悪いんだが、服、変えてくれねぇか?」
「へ? あ、わかった」
意味の分からない要求に疑問を抱きながら、すずは慌ててワンピースを脱ぎ捨てた。
キャミソール姿になったすずは、心配そうにユーリを見上げる。
「これで大丈夫?」
その言葉にユーリは顔を上げる。
鼓動は、暴れない。
最初のコメントを投稿しよう!