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「……悪ぃな」
ユーリは痛々しい笑顔で言って畳に腰を降ろし、頭を抱えるように机に肘を着いた。
「……ユーリ?」
「大丈夫、気にすんな。ほら、まだ花火鳴ってるぜ?」
「……うん」
先程の痛々しい笑顔とは逆に、いつもの優しい笑顔で言われて、すずはまた花火を見る。
暗い部屋に赤や青や緑の光が入って来て、幻想的だ。
ユーリはそんな中目をつむり、今度はどこか心地好く聞こえる花火の爆発音に心を委ねた。
小一時間ほどして、すずが部屋の電気をつけた為に彼は目を開けた。
「花火、終わっちゃったみたい。みんな帰ってくし」
「そっか。……ほんと悪かったな。せっかく花火見てたってのに」
「ううん、気にしてないよ。それにすず、花火見たの初めてじゃない気がするし」
ニコッと笑いながらすずは言って、脱ぎ捨てたワンピースを綺麗に畳み出した。
ついでに、くしゃくしゃになっている着物も畳む。
「花火って綺麗だね。すず、花火好きかも」
小さく言ったすずの言葉に、ユーリは微笑みながら頷く。
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