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軽くイラつきながら青年は言って、キセルをくわえた。
裾を捕まれながら歩くのは変な気分だ。
ジロジロと変な目で見てくる人もいる。
それもそうだ。
キセルをくわえ、右目を包帯で隠し、シャツを着ているものの胸元をはだけさせた着物。
ただでさえ普段から怪しい奴だと思われているのに、今は八歳の幼女をつれている。
「……はぁ。とりあえず、大通り歩くの止めようぜ。視線が痛ぇ」
「そう? そう思うなら別に良いけど」
カチンとくる喋り方をするもんだ。
青年はやれやれと言った風に肩を竦め、大通りから細い道に入った。
一気に生活感溢れる景色が広がる。
民家が隙間なく建ち並び、道の上には洗濯物が干されている。
しばらく歩いて行くと、大通りとまではいかないが少し開けた道に出た。
そして正面に茶屋が見えた。
「……あそこは自然物専門店だな。よし、少し休むか」
「休むほど歩いてないけど……」
「うるっせぇな、いちいち。オレが腹減ってんだよ」
鈴蘭を見下ろしながらそう言って、青年は大股で歩き出した。
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