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その間彼はキセルを取り出して綺麗に掃除していた。
と、突然ずいっとお品書きが自分の視界に現れて顔を上げる。
「……これ、食べたい」
「イチゴパフェ? ガキだな」
「う、うるさい! 好きなの食べろって言ったの……ぇっと……」
初めは勢いがよかった鈴蘭は、顔を上げて青年の顔を見るなり突然何も言わなくなってしまった。
「……クロユリだ」
「へ?」
「オレの名前。本名じゃねぇから、好きに呼んで良いぜ。お~い、良いか?」
青年はそう言うなり店主を呼んで手を上げた。
店主は慌てて二人の元に来てメモを取り出した。
「イチゴパフェ一つと……抹茶パフェ一つで」
「はい、わかりました。少々お待ち下せぇ」
店主は深々と頭を下げるとさっさと去ってしまった。
「……クロユリも子供じゃん」
「うっせぇ、抹茶な分マシだろ。あれしか気に入ったの無かったんだよ」
クロユリは言って、キセルをじっと見つめた。
金と黒で彩色された、高そうなものだ。
「で、すず。なんでお前はエージェントに追われてたんだ?」
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