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「ま、こんなもんか。んな浮浪者みてぇな格好してっと、変に目立つぜ?」
「……ふ、ふんだ。別に好きで汚れた訳じゃないし。ユーリの方が変な格好だし」
「ユーリ?」
綺麗になった顔で、鈴蘭は頷いた。
「ユーリが勝手にすずの名前略したから、すずもユーリの名前略したの。この方が呼びやすいし、それに好きに呼んで良いって言ったし」
ニコッと笑って、鈴蘭はそう言った。
クロユリは少し困ったような顔をした後、櫛を取り出して彼女の髪を梳きだした。
髪同士が絡まっていて、なかなか櫛が通らない。
「痛い! もっと優しくしてよ。パパはいっつも優しくしてくれたし!」
絡まった髪が櫛に引っ掛かって思わず引っ張ってしまうと、鈴蘭はクロユリを睨んでそう言った。
聞いた彼はげんなりした顔をして言い返す。
「じゃあパパんとこ帰れよ。オレだって好きでお前の世話してんじゃねぇよ」
「ぅ……」
言われると鈴蘭は静かになり、大人しく座って髪を梳かしてもらった。
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