蝶は花を求めて

28/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「あの椅子で待ってっから」 「ありがとう!」 すずは嬉しそうに銭を受け取ると、駆け足で店に向かった。 ユーリはため息をついて土産屋の前にある椅子に座り、再び紙に目を向けた。 『No.E-424856』と書かれているだけの紙。 これのどこがママの情報なのだろう。 裏を見るが、何も書いていない。 「……?」 困惑しながらユーリは頭を掻き、考え込む。 と、店内から声が聞こえてきて彼はそちらに意識を向ける。 「よかったねぇ。パパが買って良いって言ってくれたの?」 「ん~、うん。そう!」 (なんだ? まさかオレ、あいつの父親だと思われてんのか?) ありがとね~、と店員の声が聞こえた直後、すずが出て来た。 手には小さい袋が握られている。 「買って来た? てか、オレが父親だなんて嘘つくなよ」 「だってお店の人が言うから……。よく聞こえたね。声、おっきかった?」 いや、別に……とユーリは言って、紙を返した。 すずはそれを受け取ると、小さい袋をユーリに渡した。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加