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ビクリと体を震わせながらもすずは頷いて、ユーリの裾を掴んだ。
歩き続けて行くと、一軒の宿屋が見えてきた。
あまり良い感じはしないが、泊まれれば良い。
宿に入ると、中は見た目よりも落ち着いた感じで悪い気はしなかった。
「いらっしゃい。お泊りかな?」
「ああ。二人で頼む」
「…………」
主人はすずを見るなりじっと彼女を見下ろし、顎に手を当ててなにやら考え込む。
まさか既に警察が来ていたのか、と思ったが、どうやら違うことで悩んでいたらしい。
「えっと……あんちゃんとどういう関係だ? 兄妹、か? それとも、まさか……」
「なんだよ」
「……誘拐?」
主人の言葉にムカついたユーリは顔を歪め、引き攣った笑顔で答える。
「誘拐犯が堂々と宿に泊まると思うか?」
「そうだよ。そんな変なことするわけないじゃん。親子なの。パパだよ」
「お、親子? いやぁ、ハハ……これは失礼。随分と若いもんで……」
主人は苦笑いして頭を掻きながらそう言うと、帳面を取り出してペンを手にした。
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