蝶は花を求めて

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「……二人部屋、ちょうど空いてるね。お嬢ちゃん、お年は?」 「八歳だよ」 すずの返事に再び驚く主人。 動揺しながら帳面に必要事項を書いていく。 「ウ、ウチは十歳未満は無料なんだ。あんちゃんの分だけ払ってもらうよ」 「サンキュー」 ユーリは鍵を受け取りながら言って、言われた部屋に向かう為に階段を昇る。 すずもそれについていき、軽い足音を立てて行った。 二階に着いた頃、一階から小声で主人と、その妻であろう女の声が聞こえて来た。 「あの二人、親子なんだって? 顔は確かに似てたけど、いろんな人がいるもんだねぇ」 「なぁ。あんな格好で父親だなんて……ちょっと常識ないよなぁ。しかもあの女の子、八歳だとよ」 「八歳!? まぁ、一体いくつで父親に……。最近の若いのは本当にだらし無い……」 「ちょ、声がデカイって……」 そこまで聞いて、盗み聞きするのを止めた。 なんだかんだで信じてくれたようだ。 部屋の鍵穴に鍵を挿し、回して戸を開ける。 普通に広い部屋だ。 浴室もある。
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