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「うわぁ、広いねぇ。今日はここで寝て良いの?」
「あぁ、金払うんだ。好きに使わせて貰おうぜ」
ユーリは言って、早速着物を畳の上に脱ぎ捨てた。
着物はもちろんくしゃくしゃになる。
「……着物、ちゃんと畳んだ方が良いんじゃない? しわしわになっちゃうよ?」
「良いんだよ、別に。誰も困んねぇだろ?」
黒い肘下までのシャツに、黒いスパッツのような脛まであるズボンだか肌着だか分からないもの。
細いベルトをしているから、多分ズボンに分類されるのだろう。
黒だらけの軽装になった彼は部屋に灰皿があることを確認してその場に寝転んだ。
「お洒落さんなのに、こういうことはちゃんとしないんだね……」
「いちいち畳むのめんどくせぇだろ。それにその着物、あんまりシワつかねぇんだよ」
そう言ってユーリは目をつぶった。
すずはどうしようか迷い、机の側にある座布団の上にチョコンと座った。
座って、静かに横になっているユーリに声を掛ける。
「ねぇ、ユーリ?」
「あ?」
目を開けて、すずを見上げるユーリ。
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