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なにも記憶がなくて思い出せないが。
「…………」
まだすずが風呂から上がって来ていないことに気付くと、彼は首を回して深呼吸する。
その後、何となく自分の手を見ると震えていた。
禁断症状が出ている。
(……あいつもいねぇし、一服すっか)
ゴソゴソと自分の着物に手を突っ込んでキセルを探す。
コツン、と指先に当たったのを確認して、引っ張り出した。
ライターで火をつけ、吸う。
気分が落ち着いて、手の震えも無くなる。
「……ふぅ」
落ち着く。とても。
胸の動悸がひどいのは、寝起きだからでも禁断症状が出ていたからという訳でもなさそうだ。
「……ユーリぃ、髪の毛乾かない……」
と、すずが頭にタオルを乗っけて浴室から出てきた。
着物の下に着ていたのだろう。
キャミソールと、ちょうど着物の丈と同じくらいの薄い短パンを着けている。
そして、先程感じた石鹸の匂いがした。
「あっ! またタバコ吸ってる。すず、タバコ嫌いって言ったじゃん!」
「言ったっけ? 聞いてなかった」
ユーリはそう言って、わざといつもより多く煙を吐いた。
すずは顔を歪めてぷいと背け、ガシガシと頭を拭き始めた。
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