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簡単に体を洗って、さっさと出る。
ふと洗面台の横に目をやると、思わず苦笑いしてしまった。
「ドライヤーあんじゃねぇか……」
ユーリは服を着てそのドライヤーで髪を乾かし、そして鏡を覗き込んで顔をしかめた。
ひどい顔だ。
ユーリは極力その顔を見ないようにしながら、包帯を手にとって慣れた手つきで巻いていく。
出来るだけキツく。
じゃないと、すぐに緩んでしまう。
右目を隠し終えると、前髪を降ろして整える。
次に鏡に現れたのは、いつもの顔だけは良い男だ。
「……ナルシスト、ねぇ。まあ、あながち間違っちゃいねぇが」
ふっ、と笑ってユーリはネックレスをつけ、使用済と残りの包帯と、キレイに畳んだ着物を持って浴室を出た。
部屋に戻ると、すずは座布団を枕にしてすやすやと眠っていた。
「……なんだ。寝てんのか」
呟いて彼女を見下ろす。
まだ髪が濡れたままだ。
「…………」
起こすのも、可哀相だ。
ユーリは彼女をほっとこうと決め、包帯をしまって静かに布団を二枚敷いた。
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