蝶は花を求めて

45/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
朝。目を覚ましたすずは自分が布団の中で寝ていたことにまず驚き、それから時計を見た。 短い針が十と十一の間にあって、長い針が六を指している。 「……えっと、十時、半?」 首を傾げながら必死に時計の読み方を思い出し、今の時間を当てる。 もう十時半。驚いたすずは隣で寝ているユーリを見下ろす。 今度は右腕を枕にしているから、彼の左目の長い睫毛が見える。 「ねぇ、ユーリ。ユーリってば」 肩を揺するが、起きない。 すずはムッとして、彼の耳元に顔を近付けた。 そして大声で言った。 「起きて~~っ!!」 「ウワッ!?」 すずの大声を左耳で受けたユーリはパッと目を覚まし、体を起こした。 左耳が耳鳴りを起こして、キーン、と音が頭の中に響いている。 「てめぇ、左耳に向かって大声だけは止めろ……」 マジでキツイ、と言って、ユーリは耳を押さえた。 自分の声もちゃんと聞こえない。 「すず、悪くないよ。だって肩揺らしたもん」 「……他に起こす方法あるだろ? ったく……。で、なんで起こしたんだ?」
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加