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「もう十時半だよ? お昼になっちゃう」
そう言われたユーリはまだ耳鳴りが続いている左耳に手をやって目を閉じた。
「まだ十時半の間違いだろ? んなことで起こすなよ……」
言って、また寝転ぶ。
言われたすずは眉根を寄せて彼を睨み下ろした。
ぷぅ、と頬を膨らませて、勝手に彼の着物に手を突っ込んで櫛を取り出し、浴室に行ってしまった。
ユーリは布団の上で伸びをすると、自分で時計を確認して今が十時半だと確かめる。
十時半。
最近では一番の早起きだ。
ユーリは眠たそうにしたまま体を起こして立ち上がると欠伸をして、顔を洗う為に浴室に向かった。
「わっ!? なに!? 今、すずが鏡使ってるし!」
「なんだ、お前いたのか。って、勝手に櫛使うなよ」
ユーリが呆れながら言うと、すずは鏡に写ったユーリから視線を外して彼の言葉を無視し、髪を梳く。
「自分で結べんのか?」
洗面台の真ん中を陣取っているすずの体を押して、蛇口を捻る。
簡単に場所を取られてしまったすずはもちろん怒って、ポカポカと彼の背中を叩く。
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