蝶は花を求めて

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「む、結べるかわかんないけど……今はすずが鏡使ってるんだよ! どいてよ!」 「うっせぇ。すぐ済むんだから譲れよ。女の支度は意味もなく長ぇからな」 ユーリが言うとすずは言い返せず、素直に彼が顔を洗い終わるのを待った。 ちらっと鏡を覗き込むと、いつも前髪で隠れている右目部分が見えた。 綺麗に包帯が巻かれている。 それを見たすずはあ、っと声を上げてユーリの服を引っ張った。 「そう! ユーリ、すずとの約束破った!!」 「あ? 約束? んなのしたっけ? てか、顔洗ってんのに服引っ張んの止めろ」 タオルを引っ張り出しながらユーリが言うと、すずはまた彼の背中を叩く。 「ひどーい! お話してくれるって言ったのに! やっぱりユーリもパパとおんなじ! 嘘つき!!」 「はぁ?」 全く意味が分からないユーリは顔を拭き終えると顔を歪めながら鏡に自分を写し、前髪を整えた。 相変わらず良い顔してる。 「訳わかんねぇ。じゃ、鏡返すわ」 シュビッ、っと右手を上げて、ユーリは浴室を出て行った。
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