蝶は花を求めて

49/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
ダメかぁ、とすずが諦めて目をつむると、突然頭を押さえ付けられて髪をワシャワシャされた。 驚いて目を開けると、ユーリが隣に座っていた。 「ひ、ひっど~い! せっかく綺麗に髪の毛梳かしたのに!」 くしゃくしゃになった髪を押さえて、すずは涙目になって叫ぶ。 ユーリはそれを無視して彼女の髪に櫛を通した。 「……へ?」 「あんまりペタンコに髪梳くと、結んだ時に髪が少なく見えちまうぜ? せっかく髪多いんだ。少しは雑にした方が見た目良いんだよ」 「……そ、そう、なの?」 それを聞いたすずは大人しくなって、ユーリに背中を向けた。 ユーリは無言で彼女の髪を二つに分け、そしてすずの顔の横に手を出した。 「?」 「ゴム。無かったら結べねぇだろ」 「あっ、うん……」 すずは慌てて右手首からヘアゴムを二つ外して、うち一つを彼に渡した。 「あ。結び始めてからでなんだけど、昨日と同じで良い?」 「うん。すず、あの髪型好きだし!」 頬を染めてそう言って、彼女は体を揺らした。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加