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「オレのせいかよ……責任転嫁すんなよな」
右手だけ裾に手を通し、帯を結んでシワを伸ばす。
彼の言った通り、あんなにぐちゃぐちゃに置いてあったのに濃いシワはどこにも無かった。
「右目は見えねぇよ。ガキの頃に病気罹って失明したって言ったら信じてくれる?」
「ホントにそうなら信じる。嘘なら意地悪だし」
すずはそう言って微笑んだ。
ユーリもそれを見て頬を緩め、欠伸を一つして腰を降ろした。
そんな彼に近付いて、彼女は更に問う。
「じゃあさ、じゃあさ。なんでユーリは左手出さないの? お行儀悪いよ?」
「お前、ほんとに小言多いよな。嫌われるぜ?」
呆れ、苦笑しながら言うと彼女は腰に手を当てて胸を張った。
「口うるさいくらいが良いんだよ? パパ、いつも言ってたもん。結婚するなら、少し口うるさい女の方が良いって」
ふぅん、と言って、ユーリは机に頬杖をついた。
八歳の幼女にそんなことを教えるなんて。
一体どんな親なのか気になる。
「……オレはお前と結婚するつもりねぇぞ」
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