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「あ、ご、ゴメン……。すごい音したけど、大丈夫?」
「……もう少し手加減して欲しかったな。要は、お前みたいなガキに負けるくらい左腕は使いもんにならねぇんだよ。わかったか?」
ユーリは言いながら裾に通した左腕を引き抜き、着物の内側に戻した。
「でも、そうしておくの良くないんじゃない? やっぱりお行儀悪い……」
「ブラブラさせとくの嫌なんだよ。別にカッコつけてる訳じゃねぇから、気にすんな」
言って、彼は右肘を机につき、手をすずの前に出した。
「今度はこっちで勝負しようぜ?」
なにか企んでいるような笑み。
すずはなにか嫌な予感がしたが、勝負してみたいという気持ちが勝って彼の手に自分の手を重ねた。
そしてすずの合図で、互いに力を入れる。
その瞬間、グキ、ビタンッと明らかに痛そうな音が部屋に響いた。
「イッ、タ~~ッイ!! ユーリ、サイテーッ!!」
負けたのはもちろんすずだった。
捻れた肘、肩をさすり、机に打ったせいで赤く腫れた手の甲を見つめる。
「さっきの仕返し」
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