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「ん、構わねぇよ」
ユーリの返事に宿主は頷き、料金を言う。
聞いた彼は頷いて銭を出し、手の上で数えてから手渡した。
「……はい、確かに。ありがとうございました」
請求した分の銭があることを確認すると主人は言って深々と頭を下げた。
ユーリはそんな彼に背を向け、壁に飾られている絵画を見つめていたすずの背を押す。
びっくりした彼女は最初ユーリがいるところとは逆の方に目を向け、そして彼を見上げた。
「あれ? もういいの?」
「ああ。行こうぜ?」
聞いたすずはこくりと頷いてユーリの裾を掴み、一緒に宿を出て行った。
主人はやはり不思議な親子だと首を傾げるようにし、帳面にサインをした。
「ねぇねぇ。これからどこ行くの?」
「知らねぇよ。お前が前だって言ったろ?」
ユーリはキセルに火をつけようとしながら言い返し、すずはクッと眉を八の字にした。
なかなか火がつかない。
「ったく、なんだよ」
イラついてそう言うと、火が勢い良くついた。
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