蝶は花を求めて

58/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
当たり前のことを注意されてすずは俯く。 「に、してもスゲェな。一日でこんな手配書作られるなんて。オレん時はこんな迅速な対応取ってなかったぜ? なにやらかしたんだよ」 「だから、すずはなんにもしてないし……」 唇を噛んで、更に俯くすず。 ただでさえ小さい体が更に小さく見える。 「……こんだけパパに大事にされてるってことか? 歪んだ愛情だな」 ユーリは周りを見渡してから貼紙を剥がすと、手配書の作成者がライラックであることを確認する。 (シャガ研究所じゃなく、ライラックが……。何者なんだよ、こいつ……) ふぅ、と煙を吐いて、ユーリは歩き出した。 すずはパッと顔を上げて彼の背を見つめ、また俯く。 彼女がついて来ないことに気付いたユーリは振り返ってポツンと突っ立っているすずに声を掛ける。 「おい、置いてくぞ?」 「っ! ん……」 通りを歩く人々が不思議そうにすずを見て歩いて行く。 しかし彼女は歩き出さず、寂しそうに立っているだけ。
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加