蝶は花を求めて

70/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「なんでも良い! すず達、今日朝ごはん食べてないんだよね。朝ごはん食べないと成長出来ないってパパが言ってた」 「オレ、毎日朝飯食ってねぇよ」 「昔は真面目に生きてたんでしょ? だからそんなにおっきいんだよ」 話聞いてたんだ、とユーリは胸の内で呟いて辺りを見渡す。 特になにもない。 もうC地区の外れの方だ。 もう少し歩けばD地区に入る。 と、また貼紙を見つけて彼は息をついた。 すずは気付いていないようで、次々に見える新しい景色に目を輝かせている。 C地区の外れともなると本当に質素だ。 謙虚な暮らしをしている。 「なぁ、すず。D地区抜けるのに近道があるんだが、そこ通って行って良いか?」 「近道? 良いよ。大丈夫」 彼女の明るい返事を聞いてユーリは頷き、近道のある方へ足を向けた。 ちょうどその時十二時のチャイムが鳴って、すずは眉根を寄せた。 もうお昼。 起きるのが遅かったせいで、一日がとても短く感じる。 「お昼だね」 「だな」
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加