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「なんでも良い! すず達、今日朝ごはん食べてないんだよね。朝ごはん食べないと成長出来ないってパパが言ってた」
「オレ、毎日朝飯食ってねぇよ」
「昔は真面目に生きてたんでしょ? だからそんなにおっきいんだよ」
話聞いてたんだ、とユーリは胸の内で呟いて辺りを見渡す。
特になにもない。
もうC地区の外れの方だ。
もう少し歩けばD地区に入る。
と、また貼紙を見つけて彼は息をついた。
すずは気付いていないようで、次々に見える新しい景色に目を輝かせている。
C地区の外れともなると本当に質素だ。
謙虚な暮らしをしている。
「なぁ、すず。D地区抜けるのに近道があるんだが、そこ通って行って良いか?」
「近道? 良いよ。大丈夫」
彼女の明るい返事を聞いてユーリは頷き、近道のある方へ足を向けた。
ちょうどその時十二時のチャイムが鳴って、すずは眉根を寄せた。
もうお昼。
起きるのが遅かったせいで、一日がとても短く感じる。
「お昼だね」
「だな」
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