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「だってぇ……」
本当に泣きそうな声。
ユーリはやれやれとため息をついて、仕方なく左腕を袖に通した。
そしてキセルを左手で持ち、右手で彼女の頭を撫でてやった。
「ここ抜けたら、なんでも買ってやるよ。それまで我慢しろ。お前のママ捜す為だろ?」
「ほんと? やくそく?」
「ああ。約束」
右手の小指を立てると、すずはぐしぐしと目元を拭って自分の小指を絡め、笑顔になった。
そして手を繋いで歩く。
いろんな香水の匂いがして胸やけしそうだ。
時折ユーリに目をつけた遊女が彼の肩を叩いて声をかけるが、彼は慣れた感じで無視して行く。
建物の中から声をかけてくる女もいる。
「……みんな、綺麗な人だね」
「化粧で化けてるだけだって。あいつら、三時間かけてあの顔になってんだぜ?」
「さ、さん……!?」
すずは驚き、建物の中で座ってゆらゆらと揺れている遊女を見つめた。
言われてみれば、顔に厚く白粉を塗りたくっている。
「すっぴんなんて見れたもんじゃねぇぜ? 多分」
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