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「いや、ちょっとな……」
すずの問いに曖昧な返事をして、彼は一件の遊び部屋を見上げている。
と、後ろから一人のド派手な遊女が寄ってきて、彼に声を掛けた。
すずは怖がってユーリの影に隠れてしまった。
「ねぇ、そこのセクシーなお兄さん。アタシと遊ばない?」
「……ん?」
ユーリは無視しようとして考え、振り返った。
香水がキツイから覚悟はしていたが、想像を超えるケバさだった。
「あら、顔も良い男。若そうだし」
「……まぁな」
ユーリは軽く答えてキセルを口から外した。
ふぅ、と息をつき、彼女に見えないよう、怖がっているすずの頭を撫でてやる。
「悪いな。遊ぶ気はねぇんだ」
「あら、本気のお誘い?」
「真逆。なぁ、あんた。ここにいた菊って女知らねぇか?」
遊女はムッとしながらも考え込み、あっと気付いて腕を組んだ。
露になっている放漫な胸が強調される。
「お菊なら、ついこの間くたばったよ。元々病弱な癖に客取りまくるようなことするから……」
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