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いつもより低いトーンですずは答え、きゅっと彼の手を握った。
ユーリはキセルを左手だけで器用にしまい、その腕を着物の中に入れながら笑顔で言う。
「よし。飯食いに行こうぜ。オレも腹減った」
「う、うん」
すずは頷いて、彼に合わせて歩き出す。
明るい空。
先程までの異様な世界が嘘のようだ。
「ねぇ。ゆーかく出たから、イー地区もうすぐ?」
「明日には着くかな。今日はどっかに泊まろうぜ。お前も疲れたろ」
「すず、疲れてないよ! 大丈夫!」
「無理。オレが疲れてる」
彼に迷惑を掛けないように言ったすずだったが、そう言われてしまって口を閉じた。
少し歩いて行くと食事処が見えてきて、二人で相談してそこに入ることにした。
主人に声を掛け、席に座る。
ここの店員もすずとユーリのことに気付いていないようだ。
「なに食う? あ。好きなの食って良いけど、買ってやるのはまた別な。なんか見つけたら言え」
「え? いいの?」
お品書きから顔を上げたすずにユーリは頷く。
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