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指先になにかが当たって、摘んでみるとネギだった。
カァっと顔を赤くして、すずはそのネギを隠してしまった。
「お前、もう少し食うの上手くなろうぜ?」
「う、うるさい……。美味しかったから、急いで食べただけだし……」
苦笑しながらのユーリの言葉にすずは体を小さくして答える。
彼はそれを見てから立ち上がり、さっさと会計を済ましてしまった。
そんな彼についていき、差し出してくれた右手に自分の手を重ねるすず。
いつの間に出したのか、彼の口には既に左手が添えられたキセルがあった。
「ねぇ。なんであのお店の食べ物が自然のものってわかったの?」
「あ? 暖簾の色だよ。人工物専門は青。自然物専門が赤。半々は紫って決まりがあんだよ。店は抜き打ちでチェックされて、嘘ついてるってバレたら即刻牢屋行きだ」
スラスラと解説してくれたユーリに感心しながらすずは後ろを振り返った。
さっきの店が見える。
赤い暖簾が風に揺れていた。
「人工のものって、なんなの? 自然のものとどう違うの?」
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