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「ああ。着物着てるだけで目立つからな」
「じゃあユーリも変えないと」
「オレは良いの。オレ、服似合わねぇんだよ……」
ユーリは言って、歩き出した。
すずもついていく。
しばらく人通りの少ない道を歩いて行く。
D地区は遊郭以外特に特徴のない地区だ。
金持ちが遊ぶ為に来る地域。
そんな感じだ。
もちろん住んでいる人々は紛れも無い金持ちだが、遊郭の影響あってかあまり目立たない。
とてつもなく大きな豪邸は並んでいるが。
すずはそんな大きな家々を見上げながら、ユーリと歩く。
「……おっきいお家。あそこに住んでるの、お姫様かな?」
レンガ作りの明らかに高級そうな家を見つけたすずは小さく言う。
「ばーか。姫なんていつの時代だよ」
「ば、バカってひどい! パパが読んでくれた絵本の中に出て来たし。ピンクの綺麗なドレス着た、女の子……」
「そんなのお話の中だけだって……」
ユーリはそう言いつつも、ピンクのドレスを着た女の子を想像する。
誰かに、似ている?
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