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結局、しばらく歩かないうちに宿屋を見つけて部屋をとった。
すずは部屋の畳の上にワンピースを広げて、嬉しそうに体を揺らしている。
ユーリは彼女から許可をもらって、一服している。
「……なぁ。いつまでそれ眺めてんだ?」
「すずが飽きるまで。すず、すずが好きなもの買ってもらったの初めてだし!」
煙を吐きながら言ったユーリの言葉に、すずは頬を赤く染めてそう言った。
聞いたユーリはふぅん、と言って、再びキセルをくわえた。
すずはそれからもずっとにこにこして、ワンピースを見つめたりレースに触れたりしていた。
一人で暇なユーリはキセルの火を消して一つ欠伸をした。
既に着物は脱いである。
なにをしようか。
「なあ。先風呂入って来て良いか?」
「うん。あ、でも……。ご飯は? 夜ご飯、どうするの?」
「オレ、パス」
左手を上げながら言ってユーリは立ち上がり、浴室へ行ってしまった。
一人残されたすずは夜ご飯を食べられないことにショックを受けたが、ワンピースを買ってもらった嬉しさで腹は立たなかった。
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