蝶は花を求めて

93/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
すずは一度ワンピースから顔を上げて部屋の中を見渡し、少し悩んでからそれを手に取った。 そのまま姿見の前に行って、体に合わせる。 自分で思うのもなんだが、やっぱり可愛い。 ユーリが風呂から上がってくるまで時間はあるはず。 彼女はもう一度辺りをキョロキョロしてから、着物を脱いでワンピースに着替えはじめた。 ママの情報が書かれた紙が何処かに行ってしまわないよう、先に袂から出して机の上に置いておいた。 「可愛い……」 すずは鏡に写った自分を見て小さく呟く。 もちろん、自分自身を見て言ったわけではない。 自分に着られているピンクのワンピースに言ったのだ。 すずはその場に座って、胸元のレースに触れた。 本当に絵本の中に出て来たお姫様のようだ。 それから長いことそうしていたが、風呂場の扉が開く音が聞こえて来て慌てて着物に着替える。 帯を結び終えた瞬間、ユーリが戻って来た。 「上がったぜ? ……? なんだお前。着替えてたのか?」 「ち、違うし! 体に合わせてただけだし!」
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加