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「んなバレバレの嘘つくなよ……」
ユーリは呆れながら言って、畳の上に腰を降ろすとまだ濡れたままの髪をタオルで乾かし始めた。
真っ黒な髪が水に濡れて、黒々しい。
すずはいつもより色っぽいユーリから顔を背けて、小さく言う。
「……べ、別に良いじゃん」
「ああ、そうだな。……なぁ、すず。お前、好きなもん買ってもらったの初めて、っつってたよな。それマジ?」
「ほんとだよ。だってすず、お外出たの初めてだし。ご飯屋さんも、服屋さんも、初めて……」
すずは俯いたまま言って、ちらりとワンピースに目をやった。
「その着物は? パパが買ってくれたんだろ?」
「パパが勝手に買って来ただけだし。これ好きだけど、自分で選んだわけじゃないから……」
そっか、と言って、ユーリは机に置いてあるママの情報を手に取った。
『No.E-424856』
相変わらず謎の数字だ。
ため息を一つついて、紙の隣にあったキセルを見下ろす。
見下ろしながら、頭でなにも考えずに言葉を発する。
「風呂入って来れば?」
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