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「……うん」
すずはユーリの言葉に頷き、立ち上がると浴室に向かって行った。
小さい足音が部屋に響く。
「……単なる箱入り娘ってわけじゃなさそうだよな」
ユーリは一息ついて、キセルに火をつけた。
彼女がいなければ文句は言われない。
何回か煙を吐いて、それから何となくワンピースに目をやった。
雑に置かれたワンピース。
淡いピンク色が可愛らしい。
「…………」
しばらく見つめ、どうでもよくなると天井を見上げた。
まだ髪が重い。
ドライヤーが無いのは辛いものだ。
ユーリは天井をぼんやりと眺めながら、胸元のネックレスに触れた。
ヒンヤリと冷たい。
一人で時間を過ごし、眠くなってくるとキセルを片付けてその場に寝転んだ。
目をつむり、そして、一人の女性を思い浮かべる。
従姉妹の菊。
まさか亡くなったとは。
だが、あまり感情が動かないのは事実を知るのが唐突過ぎたからだろうか。
ショックはあるが、悲しみが込み上げて来ない。
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