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頬に水が落ちてきた拍子にユーリは目を開け、そしてびしょ濡れの頭をしたすずを見て呆れる。
「お前、もう少し乾かして来いよ」
「だって、上手に出来ないし……」
「ったく……」
ユーリは上体を起こして胡座を掻くと、彼女に自分の前に座るよう言う。
すずは嬉しそうに笑顔になって、言われるままに彼の前に座った。
「こんな濡れたままでいたら風邪ひくぜ?」
「エヘヘ」
何が嬉しいのか。
にこにこと笑って、すずは大人しくユーリに髪を拭いてもらう。
大きな手。
すずの小さい頭は、ちょうど彼の手と同じくらいの大きさだ。
「ユーリって、ほんとに優しいね」
「そうか? 気のせいだと思うけど?」
「気のせいじゃないよ。だってユーリ、すずが欲しいって言ったの買ってくれるし、髪乾かしてくれるし……結んでくれるし」
更に大きな笑みを浮かべて、すずはユーリを見上げた。
まだ、彼の髪はしっとりしている。
「それは優しさとは違う気するけどな」
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