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言って、ぐいっと前を向かせる。
すずは変な声を上げたが、気にしない。
長いこと無言の気まずい時間が続いたが、ユーリが彼女の頭をポン、と叩いたのを合図にその空気は消えうせた。
「ありがとう、ユーリ」
「ん。じゃ、オレ寝るわ」
「え? まだ……」
すずは言って、時計を探す。
見つけて数字と針の位置を見て言う。
「まだ五時だよ? もう寝ちゃうの?」
「ああ。お前は好きにしてな」
ユーリはそう淡々と言って布団に寝転んでしまった。
すずは困って、なにをしようか悩む。
一人じゃつまらないし、でも寝るのは勿体ない。
辺りを見渡して、ワンピースがくしゃくしゃなことに気付くとそれを綺麗に畳む。
だが、なんの暇つぶしにもならない。
「…………」
このまま起きていてもきっとお腹が空くだけだし、一人じゃお腹が空いても食べ物を買えない。
すずは諦めて、ユーリが敷いてくれた布団に寝転んだ。
ひんやりしていて気持ち良い。
そのまま彼女は、自分でも知らないうちに眠ってしまった。
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